NO.6

年金問題で坂口大臣と対論 東京新聞(2003.10.12)より


核心 対論

年金問題

  事実上スタートした衆院選で、最大の争点になっているのが公的年金改革だ。少子高齢化が急速に進み、財政がひっ迫する中、老後の生活の支えとなる公的年金はどうすべきか−。坂口力厚労相と民主党の山本孝史年金改革PT(プロジェクトチーム)座長に聞いた。  (経済部・上坂修子、政治部・本田英寛)
■負担と給付示し不信払拭 
       厚労相 坂口力氏
 【坂口試案】保険料主体の現行方式を維持し、保険料の上限を設定する「保険料固定方式」導入を提言。給付の急激な見直しを避けるため、年金積立金を2100年までかけ取り崩す。厚生年金は現行で年収の13.58%(労使折半)の保険料を、段階的に引き上げる。

――「坂口試案」のセールスポイントは。

 「どれだけの保険料負担で、どれだけの給付を受けられるかを明らかにした。保険料負担を年収の20%以下とし、年金給付額は現役時代の所得の50%を保証した。そのため約百四十兆円の年金積立金を取り崩す。前提として、基礎年金の国庫負担割合の引き上げはやらなければならない」

 ――引き上げに必要な年二・七兆円の財源を「増税しかない」と発言した。

 「減税では財源は出てこない。どこで税をねん出するかは税制改正の中で考えてもらいたい」

 ――試案で若年層の不信を払拭(ふっしょく)できるか。

 「厚生年金なら二十、三十歳代の人には、納めた額の二倍は必ずお返しする。ただ実質賃金を年1%上昇させる経済運営と、出生率の維持、回復が前提となる」

 ――民主党案と比べるとどうか。

 「(民主党案の)巨額な基礎年金を消費税で賄うことに国民が合意するのか。年金一元化には納税者番号制度を導入し、自営業者らの所得把握をせねばならないという問題がある。試案では負担と給付のバランスを示したが、年金の姿、形は描いていない。年末にかけて、政府の意見をまとめたい」

 ――給付削減を求める財務省とは意見が違う。

 「これまでのことは取っ払って話をする。財務相とは、一から仕切り直しをしてやっていくという話になった」

 ――首相が年金支給開始年齢の再引き上げの検討を指示した。

 「(収入があって支給を)遅らせてもいいという人は、遅らせて問題はない。ただ一律に遅らせるのは無理だ」

 さかぐち・ちから 三重県立大学(現・国立三重大学)医学部卒。医学博士。1969年三重県赤十字血液センター所長。72年衆院議員当選、93年労働相、98年公明党副代表。2001年から厚生労働相。著書に「あなたも名医」など多数。69歳。

 

■所得比例方式へと一元化 
    民主党PT 座長山本孝史氏
【民主党案】会社員などが加入する厚生年金と自営業者の国民年金を統合し、全国民対象の「所得比例年金」に一元化する。その上で最低限の年金を保証する「国民基礎年金」を創設、財源全額を税でカバー。平均水準所得を上回る層には減額する。積立金は取り崩す。


――年金の現状をどうみる。

「空洞化した国民年金(基礎年金)をどうするかという問題に尽きる。日本の社会像にどう年金制度を対応させるかを考えたとき、比重の大きい基礎年金をどう安定させるかが課題だ」

 ――民主党案の概要は。

 「国民皆年金を実現するには、やはり税しかなく、税と社会保険の役割を明確にしなければならない。全員に一律に定額を支給する基礎年金の税方式化か、低所得者に重点的に税を投入するスウェーデン方式のどちらかしかない。現行の体系のままでは無理がある。提案するのは『日本型スウェーデン方式』だ」

 ――長所は。

 「所得の捕捉さえできればスウェーデン方式、つまり所得比例年金に一元化することができる。そうなれば、所得に応じて保険料を払い給付を得るから、自営業者の国民年金が抱える“逆進性”を解消でき、できるだけ働こうというインセンティブ(誘因)にもつながる。国民全体で老後を支え合うという意味でも、分かりやすいものになる。(所得捕捉には)納税者番号制度を導入する」

 ――基礎年金の財源はどうなる。

 「四年間で段階的に国庫負担割合を三分の一から二分の一に引き上げる。必要な二・七兆円は予算の見直しでねん出。五年目に全額税負担とする時は、約2%消費税率を引き上げ、一部を年金目的税化して賄う。最低保証額は少なくとも月六万六千円は払わなきゃいけない」

 ――政府の検討状況をどう見る。

 「税と保険の役割が明確ではない。制度が複雑で、サラリーマンと自営業者などの間で不公平感が残る」

 やまもと・たかし 立命館大産業社会学部卒。兄を交通事故で亡くし、交通遺児育英会の事務局長を務める。1993年衆院議員初当選(日本新党)。2001年は参院大阪選挙区で当選(民主党)。民主党「次の内閣」厚生労働大臣などを歴任した54歳。

 

 

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