2007年5月10日 参議院厚生労働委員会
 

山本孝史君 その必要性を否定するものではありませんけれども、がんによる死亡者のすなわち数を減らす、括弧書きで年齢調整死亡率と、こうなっています。治る患者さんというものは完全に治して、それによって死亡者を減らすということは可能だというふうに思いますけれども、実際のところ、治らない、完治しないということがもう分かっていて、そういう患者さんも今でも生きているわけですね。そういう人たちも当然死亡者とならないような施策が欲しいわけです。

  放射線療法とか化学療法の推進と、こう言われたときに、この、皆さんにはお配りできませんでしたけど、今出ている基本計画のイメージ、たたき台というものは、どちらかというと早期がんの患者さんというところに重点が置かれていて、予防健診というのは、がん患者にならないようにしようということです。

  もう一つ出てくるのが、がん患者の苦痛の軽減ということですから、これをこのまま素直に受け取りますと、治らない患者さんに対して用意されているのは緩和ケアだけということになってしまう。先ほどこれを、二つの項目について更に小項目を立ててといいましょうか、これを説明するような項目を立てて、達成するための項目を立ててそれを説明すると、こういうふうにおっしゃっていただいているわけですけれども、そういったものがないと、これはどう考えても今のがんと闘っている患者さんたちにとって何らかの利益が及んでくるというふうには見えない。

  回り回ってという話はあるかもしれませんけれども、そういったところ、是非、十八日の次の協議会で事務局案を出されるわけですけれども、ずっと議論を聞いておりますと、どうしても健康局が事務局をやっておられるので、厚生省の中の健康局中心の、これまでやってこられた成人病と同じように健康増進の中での対応のようなところでとどまってしまっていて、保険局ですとかあるいは医政ですとか、厚生省の中での他の局が所管しているものですらここの中に余り盛り込まれてこない。

  世界的に見たときに、がんによる死亡者の減少のWHO等どこの国の計画もそうですけれども、がん対策、すなわちがんで亡くなる人を減らすための一番の対策はたばこ対策です。WHOの戦略的ながん対策というものを読みましても、一番最初はたばこ対策ですね。それは費用対効果が非常に良くて、安い費用でがんにかかる人、がんの罹患者を減らすことができると、死亡者を減らすと。ところが、聞いておりますと、たばこはやっぱり書けないんですね。これまでの部分しか書けない。

  そういうふうに考えますと、やっぱり私は、次の議論、事務局が出してこられる次の議論に期待しておりますけれども、是非そこで、申し上げているように、もう見付かった時点で進行がんだという患者も、従来言われているような、余命半年ですとか、あるいはそれに対する副作用のない、しかし延命効果のある治療法の開発ですとか、そういったものもしっかりやるんだというようなところが見えませんと、亡くなる人を減らせばいいというだけではないような気がいたしております。それがやっぱり議論を聞いているがん患者の非常に不満に思っているところなんですね。

  よく分かるんです、私自身もそうですから。自分ががん患者になって初めて何が問題だということを勉強して分かるようになりましたので。これだけ二人に一人ががんになるとか、あるいは三人に一人ががんで亡くなると言われていても、がん患者というのは一体何なんだというふうに思うわけですね。まだ生きているのかという感じもあるかもしれませんし、髪の毛生えているんですねというような感じもあるかもしれない。その程度はいいんですけれども、しかしもう、末期がんという言葉はありませんけれども、いわゆる末期がんと言われると、もう余命なくて、もうすぐ死ぬんだと、何もできないんだというふうに世間では思われがちですけれども、しかしそうじゃなくて、そこからが実はがん患者の光り輝くところでありまして、そういった人たちにこの基本計画ができてこんなにいい施策ができたんだと思えるような、冒頭お聞きしたような是非基本計画にしてほしい。そのときに全体目標に何を置くかというのがとっても大切で、ここにちゃんとしたものが書いてないと、たばこ対策のタの字もないと、これから先、展開のしようもない。

  そういう意味では、すべてのがん患者の苦痛の軽減と書いてありますけれども、どうしても、見ると、痛みさえ取ればいいんだというふうに思ってしまう。そうではなくて、経済的にも精神的にも社会的にもいろんな痛みを抱えていますので、そういったところも含めて減らすんだというようなそういう広い視野で、正に国を挙げて、政府を挙げて取り組むんだというような姿勢の分かる、官僚言葉でなくて、もっと中学生でも高校生でも読んでも分かるような平易な、そういうこれからの日本の世界に誇るがん対策計画というものを是非この機会に作るべきだというふうに思っております。

  つらつらと申し述べましたけれども、大臣、そういう思いで、冒頭申し上げたがん患者が喜ばないような計画というのは駄目ですよと、こう申し上げたわけで、もちろん協議会の議論ですので期待するというお言葉が妥当なんだと思っておりますけれども、そういう意味で、部局を超えて取組をしてそういうものを盛り込めというような、少なくとも厚生労働省のトップの立場で御指導いただけることを私は期待しておりますので、是非そういう形で取り組みますということで御答弁いただければと思います。

国務大臣(柳澤伯夫君) 山本委員から仕事の進め方がそもそもやっぱり縦割れにかなり影響されているところがあるのではないかという御注意をいただきながら、この基本計画こそ大事、またその中での全体目標こそ大事なんで、そこのところをもう少し視野を広く持って、今現にがんを患っている方々にもいい効果を及ぼすような施策に結び付くような、そういう考え方でそれを表現するようにというお話がございました。

  私としては、その御注意をよく重く受け止めて、これから事務局を通じてそうした方向にもっと進むように指導してまいりたいと、このように思います。

山本孝史君 それで、実は、進行がん患者がどれだけ生きられるかということを決めているのは、今おっしゃったこういうふうに医療が進みましたとかという話よりは、診療報酬制度の中で使える薬が限られているとか、ここまでしか治療法はできませんというような、そっちの方の枠の方が実は大きいんですね。診療報酬体系がもう少し良くなりませんと、出てきておられる委員の皆さん、大学の先生とか現場におられますけど、一様におっしゃるのは、もう今は疲れ切っているんだと。もう少し診療報酬が上がれば、現場では患者さんに実に納得していただけるというか満足していただける、同じことをやっていても理解をして治療を受けていただけるというふうなことになるんですけれども、しかしそうはならないです。

  だから、これも厚生労働省だから書けないんだと思いますけれども、医療を良くする云々という、専門医を育てますとか、あるいはせいぜいこういうふうにしてお金を出して放射線の機器をそろえますとか、あるいは研究費で化学療法のいいものを作り上げますとかなんとかと、こういうことは言えても、実はその大本にあるところの診療報酬制度を考えることによって、もう少し日本の医療の質を良くするというようなところが実は出てこないんですよ。協議会なんだからそれぐらい提言してもいいじゃないかと思いますけど、それすら実は触れられない。そうなると、幾らそういう研究的なことをやっていただいても、実はがん患者にとって生存期間というのは診療報酬制度で決まっている、というのは自分が当事者になってそのことがよく分かる、あるいは大変に厳しい状況で医療が行われているということはよく分かるわけです。

  それで、ちょっと時間があれしてしまいますので、端的にお伺いしますけれども、質問通告のしたところへ戻りますが、がん難民が生まれているというふうにこう言われております。大臣はそういう状況にあるんだという御認識をお持ちになっておられるだろうか、あるいはもし持っておられるとすれば、それはなぜがん難民という人たちが生まれるというふうに思っておられるのだろうか、お聞かせをいただければというふうに思います。

国務大臣(柳澤伯夫君) 今、山本委員のお話の中でも、お医者さんとの対話の中でもっと患者さんに納得できる、そうしたコミュニケーションの下での治療というようなものができるんだがというようなお話がございましたけれども、やはり納得して、あるいは希望する医療が施されるというようなところにまで至らない、そういう患者の方々がいらっしゃるという意味でがん難民という言葉が使われている、そういうことだというふうに私は承知をしているわけでございます。

  その背景というものをどういうふうに考えるかということでございますけれども、これはもう何と申しますか、そうした事態に陥った人たちというのは、もう必死になっていろんな情報をその人その人なりに何か自分を救う手だてはないのかという意味で探されるわけでございます。そういうことの努力が片方に当然のことながらあるわけですけれども、それと自分が現実に施される医療あるいはお医者さんの言葉というようなものとの間に非常にギャップが生まれているということではないかというふうに思います。

  それが、今委員は診療報酬の立て方にも原因があるのではないかという御指摘をいただいたかと思いますけれども、その他いろんな要因がそこには作用しているのではないかというふうに私としては考えているところでございます。