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1月29日(日)号
今通常国会は医療制度改革が主題ですが、年金改革議論も進めなければなりません。
しかしながら、年金改革の与野党合同会議での議論を振り返るとともに、必読の書と薦められた新川敏光ら編著の『年金改革の比較政治学』(ミネルヴァ書房、2004年10月)を再読して得た結論は、「年金改革は棚上げとなる。真の年金改革は、さらに先送りされる」でした。
■ 年金改革合同会議は頓挫する?
国会に設置された「年金制度をはじめとする社会保障制度改革に関する両院合同会議」は、平成17年4月8日の顔合わせ以降、同年7月29日まで、8回開催されました。
その間、私は5回発言し、論点を明示し、いくつかの改善案を示しました。最終日には、「今日までの話し合いを整理し、一定の合意がある事項について整理すべきだ」とも提案しました。しかし、残念ながら今日までそのような動きは見られません。
与党にとっては、基礎年金の財源としての消費税引き上げに、野党の同意を得るために開いているような会議です。「どうせ野党は消費税引き上げの赤信号を一緒に渡ることはないだろう」と考える与党議員にとって、会議の開催はまったく意味がないのかもしれません。
おまけに、与党は04年改正案が唯一、最善の案だと主張して譲りません。自ら厚労大臣を出し、年金法案を強行採決で通した公明党に至っては、これ以上の「修正や改正」が加えられることは絶対に許されないのでしょう。
結局のところ、合同会議には与党側から推進力を与えられておらず、形式的なものにならざるを得ない状況です。
■ 年金改革合同会議での私の提案
今回の与党主導の年金改正の中味は(1)基礎年金保険料について、定額制度を維持したまま16,900円まで引き上げる。(2)基礎年金にもマクロ経済スライドを適用して実質価値を減額する。(3)段階保険料制度を導入する。というものでした。
これらの措置は、無年金あるいは低年金者を構造的に発生させることになります。そもそも、基礎年金の「基礎」の意味が不明確になってしまっています。年金改革とは基礎年金改革に尽きるはずです。
合同会議で、私は、「年金改革とは、基礎年金改革に尽きる」との観点に立って、幾つかの提案をしました。以下、整理してみます。
最低保証年金として基礎年金を位置づけ、財源は保険料ではなく、税方式に切替える(無拠出。居住要件で給付する)。財源には、消費税だけでなく、相続税や企業が負担する社会保障税なども検討する。政府・与党は、社会保険料のほうが安定的に収入を確保できるから社会保険方式を維持するという考え方に拠っているが、それでは若年者の未納・未加入率を改善するのは困難だ。
現行制度を前提にするのであれば、(1)基礎年金と報酬比例年金の保険料を分離し、それぞれの保険料であることを明確にして徴収する。(2)基礎年金保険料を国民健康保険や介護保険と同様に、所得に応じた段階保険料に改める。(3)納付できない場合は、申出によって保険料を納めたとみなす(この措置によって、当該期間については満額の年金が保障される。要するに、現在は給付時に行なっている国庫負担を、保険料納付時に減免を受けている者の保険料として納付する納付時負担に改める)。
いずれの場合も、徴収は社会保険庁と国税庁を統合した「歳入庁」が行い、年金給付は「年金事業庁」が行なう。所得捕捉率を高め、給与所得者と自営業者との間での税負担の公平さを高める一環として、納税者番号制度の導入を急ぐ。
若年者の年金不信に対応するには、税方式の基礎年金(最低保証年金)と見かけ上の積立方式の報酬比例年金を組み合わせた年金制度を新たに発足させ、ある時点から、新制度への加入に切替えることが必要だと思います。
■ 老後に経済的不安のない自民党議員
真の年金改革を拒んでいる要因は、与党の面子(めんつ)以外にもないのでしょうか。
ひとつは、自民党のなかで、そもそも、自らの老後に経済的不安を感じる国会議員がどの程度いるのでしょうか。世襲議員や大企業のバックがある自民党議員が、低所得者の年金問題を熱心に考えるはずがないのではないか。これは言い過ぎでしょうか。
そんな自民党議員と違って、連立与党内で低所得者の代弁者だと期待されている公明党が、残念ながら、その役割を果たしていないのです。このことも年金改革を妨げている要因です。
■ 厳然たる山口新一郎年金局長の影
厚労官僚のなかにも現行の年金制度を前提にしている限り、真の年金改革はできないと考える人もいます。しかしながら、死してなお威光を放っている山口新一郎年金局長の存在が無視できないのではないでしょうか。
周知のように、基礎年金制度が創設された昭和60年の年金改革は、当時の山口年金局長の壮絶な戦死と引き換えに実現しました。その山口局長と仕事をともにした厚生省OBが天下り先の厚労省所管団体にいて、現職官僚にもまだ残っているという状況では、山口局長遺作の「基礎年金」の改革に、手を出す厚労官僚はいないのではないかと思います。
■ より大きな危機を回避するために
新川の指摘する「非難回避戦略」を政府・与党が採ってきたため、数次にわたって、年金保険料の引き上げと給付額の減額が繰り替えされてきました。厚労省も、人口等の予測を誤ったのではなく、本当のところは、一気の改革が政治的に受け入れられないため、「逃げ水」と批判されるような年金改革をしてきたのではないでしょうか。
今後、人口減や経済の低成長によって、年金額の所得代替率はさらに低下します(政府与党は認めようとはしませんが)。しかし、「ものすごい改革案だ」とされるマクロ経済スライドによる年金縮減の影響は、現時点での受給者にはほとんど及ぶことはなく、引退間際の中年層でも影響は少ないのです。一番割を食うのは、現在の若年層です。これからは、老後生活の糧となるような退職金を当てにすることはできません。完全雇用すらおぼつかない状況下で、若年層の年金離れは一層加速されるでしょう。
彼らには、定額のミニマム年金と、公的関与のある拠出制所得比例年金を組み合わせた新年金制度を提示し、さらなる保証は自助努力に委ねられるというのが、抜本的な解決策だと再度主張します。
新川が著書で指摘するように、問題の先送りは、より大きな危機を醸成します。年金改革を棚上げにする訳にはいかないのですが、年金合同会議が再開される見通しはないようです。
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