がん対策基本法 患者の視点で内容の充実を
がん対策基本法が16日の参院本会議で可決、成立した。私は5月22日の参院本会議で、がん患者であることを公表し、今国会での成立を訴えた。国会議員としての職責が果たせたと思っている。
同法は、日本人の死因第一位で、年間30万人以上が犠牲になっているがんに、国を挙げて取り組む意思を示すとともに、がん医療の水準を向上させる施策の根拠になる。
評価できるのは、「がん対策推進協議会」が設置されること。患者と家族や遺族、医師、学識経験者の3者で構成する。厚生労働省もがん対策に取り組んできたが、患者や家族には必ずしも十分ではなかった。政策決定に患者らが関与できる意義は大きい。
厚労省は既に「がん対策推進アクションプラン」を策定し、5年生存率を現状より20%改善するなどの目標を掲げている。その達成に向けて、所要の事項が整理され、国や都道府県に策定が義務づけられる「がん対策推進計画」に、達成時期とともに盛り込まれる。がんとの闘いの国家戦略が定まるわけだ。
その際、「患者の視点」を積極的に盛り込むべきだ。例えば、@医療機関や治療法など、患者が判断を迫られた時に適切な情報が提供される体制をどう整備するかA告知されて、動揺する患者や家族の相談に応じたり、精神的に支えたりするには、どんな機関が必要かB自宅で最期を迎えたい患者のために、訪問看護制度をどう充実させるかなど、検討課題は少なくない。
厚労省と文部科学省の連携強化が、法的に裏づけられたことも意義深い。がんの専門医を増やすにも、医学生の養成は文科省、医師の育成は厚労省という「縦割り行政」では、十分には機能しない。がん診療の拠点病院の整備が遅れているのも、大学病院との連携が不十分だったからだ。
一方、がん登録制度と財源の確保策は今後の課題だ。これは、老人保健法などで国や都道府県に実施が求められているが、取り組んでいる自治体は少ない。患者一人ひとりの病歴管理に、人手も経費もかかることが大きな理由だ。
だが、がんの罹患者数、罹患率などの疫学的調査、検診や医療の評価には不可欠だ。病歴のデータを参考にすれば「地域格差」の是正にもつながる。病歴管理に公的支援を充実させて、登録事務ができる自治体を拡大すべきだ。
最近は、個人情報保護への関心の高まりから、英国やドイツでは、事業が一時休止に追い込まれるという事態も起きている。だが、@登録機関とデータ利用機関に罰則付きで守秘義務を課すAデータから個人を特定できなくする匿名化を進める――などをすれば前進するのではないか。
必要な財源の確保策も大きな課題だ。政府が歳出抑制を優先させる結果、医療は崩壊の危機にある。だが、医療には人手がかかり、新薬や新たな医療機器が高額化しているのも厳然な現実である。
医療水準向上のための人材、設備の確保、患者の経済的負担の軽減に財源は不可欠だ。公的助成の拡充や健康保険料の引き上げなど、国民的合意を急ぐべきだろう。
元民主党参院幹事長、著書に「議員立法」。
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